これが始まりかもしれない
世の中には信じたくないことがたくさんある。
甲子園のヒーローが涙のドラフトを経て西武へ。
因縁の巨人との日本シリーズでも、人目をはばからず男泣き。
最後は愛する息子を抱き寄せ、
23年間の現役生活と、野球に別れを告げた。
繊細な心を強靭な肉体で覆い隠し、
ファッションやヘアースタイル、さらには
威嚇の姿勢で、生来の弱さを封印しつづけた。
マスコミが作った『球界の番長』というイメージは、虚像でしかない。
彼が、そんな男を演じる、いや、演じなければならなくなったのは、
いったいいつからだろう。
ユニホームを脱いだ彼は、
自分の存在そのものが、消えてしまったかのように言う。
いや、そんなことはない。
ファンの心にはいつまでもあの一打、あの一本、あの涙が、焼きついている。
そしてそれは、どんなことがあろうと消えるものではない。
終わったわけではない。
むしろ、これが始まりかもしれない。
いまがどん底なら、あとは這い上がるだけ。
いつの日か、ユニホームを!!